現在、当研究室が動物医療センターにおいて実施中の犬のがんに対する臨床試験
1. 様々な犬のがんに対する腫瘍溶解性ウイルス療法
がんにだけ感染してがん細胞を壊すウイルスを「腫瘍溶解性ウイルス」といいます。様々なウイルスにそういった作用があることが知られていますが、多くは組換えウイルスとして使用されています。組換えウイルスは、遺伝子組換えしたウイルスを用いるため、投与した後の動物の体内から遺伝子組換えウイルスがでてくる可能性があり、環境への安全性などを考慮する必要があります。具体的には、投与された動物の唾液や糞便、尿などをきちんと処理する必要があります。
我々のところで用いているウイルスは、レオウイルスとよばれるウイルスで、遺伝子組換えしていない自然に存在するウイルスを薬として投与できるように精製したものです。このウイルスは、自然界にもともと存在するものと全く同じであるため、その排泄などについて環境への悪い影響はありません。一方、遺伝子組換えしていないため、遺伝子組換えしてその作用を強力にしたものと比較すると、がん細胞を壊す能力がすこし劣るのは間違いありません。
このレオウイルスを使用した臨床試験を2013年から山口大学動物医療センターで実施しています。すでに多くの犬のがんに対してその効果の検討を行ってきました。その結果については、Veterinary Comparative and Oncologyとよばれる英文科学雑誌に論文として掲載済みです。
2. 様々な犬のがんに対する免疫チェックポイント分子(PD-1)阻害抗体療法
犬のがん(とくにメラノーマ)に今のところ一番効果がある免疫療法はこれだ!(飼い主さん向け)