犬猫の病気の治療に使うステロイドは、使いかたに気をつければ、安全な薬です(飼い主さん向け)
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自分のペット(犬、猫)に動物病院でステロイドを処方されたけど、
ステロイドって怖いって聞くので、あまり飲ませたくない。
ステロイドを飲ませても大丈夫なの?
こうした疑問について、
ステロイド好きな獣医(といっても、いたずらに使うわけではありません)である僕が、解説します。
ちなみに、
ステロイドの使い方に関する日本語解説を様々な獣医の雑誌に掲載していますし、
ステロイドの使い方のセミナーなども獣医師向けに行っています。
また最近では、ステロイドの効きかたが遺伝的に異常な犬の症例報告も英語文献として報告しました。
目次
- 犬と猫の病気に対するステロイド治療は、うまく行えば安全です
- ステロイド治療を行うには、明確な理由があるはずです
- ステロイドを使わないと治らない病気はたくさんあります
1. 犬と猫の病気に対するステロイド治療は、うまく行えば安全です
ステロイド治療と聞くと、副作用が怖い薬、というイメージがついて回ります。
ステロイドってなにかについては、別途こまかく書くことにしますが、
ステロイドとは、副腎とよばれる臓器から作られるホルモンの総称みたいなものです。
そのなかの糖質コルチコイドをよばれるホルモンが、
いわゆるステロイドとよんでいるものですが、
そのステロイドを治療として、
外から飲ませたり、注射でうったり、塗り薬として使用したりします。
獣医療でよく使われるステロイドの薬ですが、
飲み薬としては、プレドニン、プレドニゾロン、デカドロンなどが多いと思いますが、
それ以外にも塗り薬などを合わせると、かなりの種類の薬があり、
それぞれ名前が異なります。
とくに皮膚病の塗り薬で動物用で売られている外用薬は、
多くにさりげなくステロイドがはいっているので、
成分を一度ググってみるのもいいかもしれません。
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獣医療では、医療にくらべてステロイドを多用する傾向にあります。
理由の一つは、
犬と猫が人にくらべてステロイドの重い副作用が比較的でにくい(出ないわけではない)からだと思います。
これは、ステロイド自体が、人より犬、犬より猫の方が感受性が低いことによります。
だからといって、なんでもステロイド、というのはよくないですし、
使うには使うだけの理由がもちろんあります。
ただ獣医側も、医者にくらべると気軽にステロイド(とくに内服薬や注射)を使用する傾向にありますが、
もちろん使い方によっては副作用が出る可能性がありますので、
テキトーに使うことはご法度ですし、
飼い主さんも、
なんでステロイドを使用しなければならないのかなどについても
聞いてみてもいいと思います。
ステロイド薬が、いろいろ副作用のことで評判が悪いのにもかかわらず
我々が多用する理由としては、
その作用が幅広く、とても安価で、飲むとすぐに効果がみられる、ために、
うまく使うととても良い薬だからです。
したがって、大事なことは、
獣医が「うまくステロイドを使う」ことであり、
それによって、大きな恩恵がえらえることは間違いありません。
2. ステロイド治療を行うには、明確な理由があるはずです
医療では、ステロイドというとアトピー性皮膚炎の治療の外用薬として使うことが多いと思います。
しかし一部ステロイド拒否論者などがいらっしゃるため、
インターネットのいろいろなところに、「ステロイドを使わずにアトピーを治す」などとか書かれているものをもたくさんあります。
しかし、このアトピーもステロイドをうまく使う必要がある病気ですし、
動物の医療においても、ステロイドを使わないと治らない病気もたくさんあります。
つまり適材適所であって、必要であれば使うのは当然なのです。
我々がきちんと説明すれば、
多くの飼い主さんは受け入れてくれますが、
なかには、ステロイド治療はできるだけ避けたい、という方もいらっしゃいます。
一方、獣医側は獣医側で、
飼い主さんになんの薬かを説明せずに処方しているパターンや、
毎日通って注射をうってもらう中に、
さりげなくステロイドがはいっているようなパターンまでありますので、
こうした獣医側の質の問題も否めない点があります。
したがって獣医師は、
ステロイドをむやみやたらに使うのではなく、
使うのであればきちんと理由とともに使う期間などを飼い主さんに丁寧に伝える、
飼い主さん側も、ステロイド恐怖症になるのではなく、
聞きづらくても、なんのためにいつまでどういう風にステロイドを使用するのかということを聞いて、
お互いに意思疎通することで(これはステロイドに限らず獣医療全部がそうですが)、
病気で困っているペットが利益をこうむることができるのか、はたまた副作用でかわいそうなことになるのか、が決まります。
3. ステロイドを使わないと治らない病気はたくさんあります
動物の病気を治療するのに、ステロイドが必要な場合は、たくさんあります。
ステロイドを用いるのは、
炎症をとめる、
免疫を抑える
というのが主な目的ですが、
重要なことは、
どのタイミングで、どの程度の量で、どれくらいの期間、どのような頻度で、
用いるかです。
一般的に、飲み薬や注射でなければ、
それほど副作用もないと考えがちですが、
なかにはステロイド入りの塗り薬を長期にわたり使っていて、
それで副作用に悩まされることもあります。
したがって飲み薬、注射、外用薬をすべてあわせて
獣医がコントロールする必要がありますので、
よくかかりつけ医さんとご相談されてください。
とくに病院を途中でかわって、
塗り薬だけは前の病院でもらったものを次の獣医に黙って家でつけている、
なんてことがないようにお願いします。
以上のようなことを、
獣医側と飼い主さん側のお互いが正しく理解することによって
うまく病気がコントロールできることを期待します。