犬にステロイドを投薬したときにみられる副作用を簡単に解説します(飼い主さん向け)
先日の解説で、
犬猫の病気の治療において、ステロイド薬が重要であることをお話ししました。
今回は、実際にステロイドを処方されたとき、投薬しなければならなくなったときに、
どういう副作用としての症状がみられるのかを1つ1つ解説します。
これを読んでいただくことで、ステロイドを与えたときの副作用を過度に心配する必要がなくなります。
多飲多尿
投薬をはじめてから、わりとすぐにみられる症状です。
とにかくたくさん水を飲んでたくさんおしっこをします。
場合によっては、おしっこを我慢できずに、普段しないところでおしっこをしてしまったりします。
たくさん飲みたくなるのは仕方ないことですので、
常にお水をきらさないようにしてあげてください。
多食
食べるのが増えるのも、わりとすぐにみられるほぼ必須の症状です。
なかにはあまりにも食欲が亢進しすぎて、ゴミ箱をあさったりする子もいるくらいですが、
本人が満足するほど食べさせていると、極度に太ってしまうこともありますので、
制限が必要です。
お腹がはる(腹部膨満)
これもよくみられる症状です。
お腹が張る理由はいくつかあります。
まず多食になりますので、常に胃がはった状態になります。
また多飲になっておしっこの量も増えますので、常に膀胱もはった状態です。
さらに肝臓が大きくなるのでお腹がより張るのですが、
極め付けは筋肉が落ちるので(後述)、
四つ足動物はお腹の筋肉がおちることでお腹が垂れ下がります。
そうした状態をpot berry(太鼓腹)と呼んだりもします。
肝臓が大きくなる(血液検査で肝酵素の上昇)
これも比較的短期間でみられる症状ですが、血液検査をしなければもちろん肝酵素の上昇には気づきません。
肝酵素とよばれるALT (GPT), AST (GOT), ALP, GGTの4つがそれぞれ上昇します。
これは胆汁のうったいによるためで、避けることができない副作用です。
とくにALPの上昇は著しく、ひどい場合は、200000IU/lくらいになることもあります。
これは必ずしも肝臓が炎症を起こしているとかいうわけではなく、
犬の場合は、ステロイドによって肝臓の酵素がより作られるようになるからでもあります。
もちろん肝酵素が高いのが続くのはうれしいことではありませんが、
ある意味ステロイドを服用しているときは、仕方ないといえるような副作用の一つでもあります。
通常は、ステロイドの投薬を減らすことにより、すべて下がりますので、ご安心を。
皮膚の症状(毛が抜ける、皮膚が薄くなる、感染しやすくなる、石灰沈着)
皮膚にはさまざまな症状がでます。
通常服用しはじめてすぐに認められるわけではなく、
少し時間がたってからみられることが多いですが、
非常に多彩な症状がみられます。
まず体全体の毛が薄くなってきます。
また皮膚がとても薄くなります。
これはとくにお腹でわかりやすく、お腹の血管が皮膚からすけてみえるようになることもよくあります。
また皮膚の免疫力もおちるので、皮膚で感染しやすくなります。
さらに長く使用している子では、石灰沈着もみられるようになります。
息遣いがあらくなる(パンティング)
ステロイドを服用していると、息遣いが荒くなります。
一つは、お腹がはるために胸を圧迫することが一つの理由ですが、
それ以外にも息を吸う管である気管や気管支に石灰沈着がおこることも理由の一つです。
筋肉がおちる(筋の虚弱)
意外とみすごされがちなので、筋肉がおちることです。
見た目に筋肉がおちたことは、ひどくならないとあまり見た目にはわかりづらいので、
なんか最近足に力がはいんないとか、後ろ足が震える、というような症状としてみられるかもしれません。
とくに後ろ足をよくさわってみると、筋肉が落ちていた、ということもありますが、
通常すぐにみられる症状ではないので、長期的に服用することでみられる副作用です。
感染しやすくなる(易感染性)
体に入る量にはよりますが、
原則としてステロイドは免疫力をおとしますので、いろんなところが感染しやすくなります。
なかでも上記のように皮膚の感染がおこりやすくなるのと、
膀胱の感染は比較的よくおこります。
膀胱の感染は、必ずしも症状をださないですが、
膀胱炎のような症状がみられることもあります。
糖尿病
糖尿病は、ステロイドの副作用というより、
ステロイドの服用によって、起こりやすくなる病気の一つです。
ステロイドを飲んでいると、体のなかでインスリンの効きが悪くなるため、
もともと糖尿病がない子でも、糖尿病になることがあります。
多飲多尿多食は、糖尿病でもみられる症状ですので、
なかなか気付きづらいこともあります。