(獣医系)大学院に行くメリットを7つ解説します

・大学院に行くメリットを知りたい
・あえて獣医の大学院である必要はあるのかな
・お金もないし、将来も不安

こういった疑問に答えます

本記事の内容

1. 大学院に行くメリットを7つにまとめました
2, 獣医の大学院に行くべきか、それ以外の大学院に行くべきか、解説します
3. 大学院に通うお金をどうするか、また将来性はどうなのかについて解説します 

この記事を書いている僕ですが、
 自分自身も悩んだ末に獣医系大学院に進みました。
 また大学教員として、多くの大学院生を間近で見てきました。
 うちの研究室からも大学院生出ています。

こういった僕が解説していきます。

1. 大学院に行くメリットを7つにまとめました

その① 研究にどっぷりつかることができる

これが一番幸せですね。研究が好きな人であれば、こんな幸せな時間はありません。
思う存分研究のことを考えて毎日過ごせます。
学部学生のときと違って、多くの授業や実習のことを考える必要がないので、全く違う生活です。

その② 自分で論文を読んで考えることができるようになる

学生時代もそういうトレーニングをつめるのは事実ですが、
やはり自分で論文を読んで考えるには十分な時間をとれてはいないと思います。
一日中好きな論文を読んで、それをもとに妄想を膨らませるのも、この時期ならではの楽しみ方です。

その③ 自分で研究を組み立てて、仮説を実証する、というストラテジーが身に付く

これは研究者として必須の能力です。
すべては仮説とその実証、またそれを解釈して、さらに次の仮説を立てる、ということをずっと繰り返すわけですから、そのトレーニングとしては大事な時間を過ごすことができます。
これはなかなか毎日繰り返さないと身につかない能力だと思いますので、どっぷり大学院生活に入り浸るなかで得られると思います。

その④ 論文の書き方が身に付く

学部学生のころから自分で論文を書いて投稿できるようになる学生はほとんどいません。
論文は何本も書いて、それを指導教員に添削してもらって、またそれを直して、という過程を経て、
初めて自分で書けるようになりますし、その楽しみがわかると思います。
一方で、論文を投稿した後の、ピアレビューのコメントを見て、一喜一憂して、
さらに、ときには不条理なレビューワーの要求に追加実験で答えていく、という一連の過程を味わってこそ初めて論文がアクセプトされた真の喜びを知ることができます。

これらができるようになって一人前の研究者ともいえるでしょう。

その⑤ 研究者として、外の人と対等に話ができる自信が身に付く

学部学生のころより、学会に行く回数も増えます。
学部学生はどちらかというと外部の人に会っても可愛がられるだけだと思いますが、
大学院生くらいになると、研究者の卵として、世間もみてくれるようになります。
学会発表では、自分の発見に対して、真剣に研究者として議論を挑んでくる人もいるかもしれません。
こうしたことを通じて、少しずつ研究者へと成長していき、また自分自身にも自信がついていきます。

その⑥ 指導者という立場で学生実習などに携わることができる

大学院生になると、TA(ティーチングアシスタント)という形で、学生実習の手伝いなどをするようになります。これは将来大学教員を目指すのであれば、いいトレーニングになります。また人を教えることで、自分が本当に理解しているのかどうかがよくわかると思います。いい加減にしか理解できていないものは、人には教えられません。こうした経験を経てさらに一人前の教育者へと成長していきます。

その⑦ 論理的思考を学ぶことができる

上記のことはすべてここにつながるのですが、
大学院の期間のトレーニングは、すべては論理的思考をすることのトレーニングになります。
論理的思考はどの職業につくにしても、必須の能力です。

「人間は考える葦である」とパスカルが言ったように、高等教育をうけるなかで論理的思考を学び、それを伸ばすことができるのも大学院の一つの大きな役割だとも言えます。

2. 獣医の大学院に行くべきか、それ以外の大学院に行くべきか、解説します

結論は、自分のやりたいことができるところに行くのがベストです。

獣医系学部の学生は、獣医系の大学院に行くべきか、それ以外の大学院に行くべきか迷います。
今の時代は、どこの大学院も学生が欲しくて困っているので、
基本的に学生からすると売り手市場ですから、行きたいところに行ける可能性が高いので、
大事なことは、自分が何をしたいか、どういった大学院生活を送りたいかで決めるべきです。

今いる研究室にそのまま残れば、研究の継続性もあることから、
そのまま続けて結果もでやすいですので、やりたいことが同じところできるのであれば、一つの選択肢です。

全く違う分野のことをやりたいのであれば、それも一つ。
自分がやりたい研究テーマを変更する機会はたくさんありますが、
こうした区切りの時が一つのチャンスだとおもいます。
今は、研究分野でさえ様々な分野との融合(共同)が重要な時代なので、
幅広くいろんな経験を積むという意味で他の研究室に移動するのもありだと思います。

もちろんラボを移動するとなると、
移動先のラボが当たりなのか外れなのかは、
なかなかわかりづらいところもあるので、事前調査が重要なのはいうまでもありません。

そして上記のような能力が身につくように懇切丁寧によりそってくれる教員がいる研究室を選ぶべきなのもいうまでもありません。学生を集めるだけ集めて放置なところもありますので、やはり研究室選びは重要です。

3. 大学院に通うお金をどうするか、また将来性はどうなのかについて解説します 

大学院に興味があるけど迷う、という人の多くの方が懸念されるのは、
経済的な問題と将来的な問題の2点だと思います。

経済的な問題

もちろん多くの大学院は授業料がかかりますし、その間の生活費も必要です。

授業料免除についてはうまくやると最低半額は取れる可能性は高いです(僕の知る限り。私立大はわかりません。)。
生活費をどうするかですが、我々のところのような田舎であれば、生活費は安くてすみますし、
都会でも自宅から通うことでその辺りは抑えられると思います。

あとは、獣医師免許があるのであれば、動物病院でバイトをさせてもらえば、
臨床経験をつみながら、普通にバイトをするよりは効率よく生活費を稼ぐことができると思います。
山口の場合、幸いそうしたことにご協力いただける動物病院さんも多くいらっしゃいますので、
とてもありがたい環境です。

経済的的な問題をクリアする一番の方法は、日本学術振興会の特別研究員になることです。
このシステムについてはまたどこかで解説します。
この特別研究員になることは簡単ではないですが、計画的にやれば取れる確率はあがりますので、
大学院に入る前の年から計画的に準備するのが重要です。
早くから行きたい研究室の先生と相談するのが重要だと思います。

ただでさえ獣医で6年間通っているのに、
さらに4年間の博士課程となると経済的なことは大きな問題になりますが、
やっぱり自分が大学院に本当に行きたいかどうかで決めるのが大事です。

将来的な不安

高学歴プアという言葉があるくらい、博士をでても将来の不安はつきません
昔は、「末は博士か大臣か」といわれていたくらい、博士というものは特別な存在だったわけですが、
その博士をとっても、十分にご飯を食べられないかもしれない、という日本の深刻な現状も無視できません。そういえば、博士は「足の裏のご飯粒」という有名な言葉もあります。つまり、足の裏のご飯粒のように、取らないと気持ち悪いが、取っても食べられない、という例えです。

昔と比較すると、研究者(主にアカデミア)の常勤ポストは減っていますので、将来が安泰とはいえないのが事実です。
ただしまず博士をとったあとに自分がなにをしたいのかということを考える必要があります。
博士をとっても普通に臨床獣医師をするもよし、大学教員を目指すもよし、企業に勤めるもよし、いろんな可能性があります。では博士をもっていることは、それらのポストにつくのにプラスになるのか。残念ながら、日本の場合、博士をもっていて明確に得になるかといわれるとそういうことではないことが多いです。ただし、大学教員の正規(常勤)ポストは博士をもっていないといけないところが多いです。企業の研究開発などの場合は、学部6年生のときに就職するよりメリットがあると思います。

その程度である、というのが現実なのです。

ただ、ただ、みなさん獣医師免許という国家資格をもっているじゃないですか
言い方悪いけど、もし希望のポストがなければ、その免許をいかして、
臨床獣医師もできるし、獣医師として公務員もできるわけです(決してこれらの職業をつぶしという意味でいっているわけではありません)。
そういうところでは、獣医師は引く手数多です。

このように考えると、もし本当に大学院にいって研究をしたい、という気持ちがあるのであれば、
今しかないのではないでしょうか。将来臨床獣医師になるにしても、上記のような経験をした人としていない人では、自ずと大きな違いがでるのは間違いありません。

あと最後にうちの研究室も見学受け付けています。誰か一緒に研究しましょう