獣医内科学の勉強におすすめの本を紹介します(獣医学生+獣医初心者向け)

獣医でも診療科は大きく分けると、内科と外科に分かれます。
外科は、手作業が主体で職人芸なところがありますので、
もともとの向き不向きはあるものの、経験がものをいうことは間違いないわけです。

一方、内科は経験も大事ですが、
病気に対する考え方を身につけることがもっとも重要で、
そのためには診断アプローチを学ぶ必要があります。

ただ診断アプローチを学ぶためには、
個々の病気をきちんと覚えていないとアプローチできませんので、
結局はいかに正確に典型的な病気を網羅して知っているかが重要です。

ここでは、
学部学生の時代から25年以上獣医内科学に携わってきて
現在の獣医大学での内科学の診療を行いアジア獣医内科専門医でもある私が、
獣医内科学の勉強におすすめの本について解説します。

これらをマスターすれば、獣医内科学の知識は十分すぎるはずです。

目次

1. 獣医内科学を勉強するのに一番いい教科書は、まずは「獣医内科学」です
2.   海外の教科書は、やはり読むに越したことはありません。辞書がわりに調べるのもいいと思います
3.  上記の本を読むと内科の病気の知識は十分ですが、診断プロセスを意識する必要があります

1. 獣医内科学を勉強するのに一番いい教科書は、まずは「獣医内科学」です

結論からいうと、獣医内科学を勉強するのに一番いい教科書は、まずは「獣医内科学」です。
おそらく日本全国の獣医大学では内科の教科書に指定されているはずですので、みなさんお持ちだと思います。

いろんな商業誌などいろいろ手に入る時代ですし、
教科書というと一般的にはいいイメージないですが、
この本は、著者もそれぞれ適切だと思われる全国内科系教員がきちんと書いていて、
現在は第2版ですが(第3版は現在原稿校正中)、
毎回アップデートもきちんとされています。

また内科学の教科書とはいっても、
それに付随した必要最小限の生理学の話や、臨床病理学的な検査のことなども一通り書かれているので、
まず基本的な知識ということでいうと、この本を読んで少なくとも病名をすべて理解し覚えることが重要だと思います。

2. 海外の教科書は、やはり読むに越したことはありません、辞書がわり使うのもいいと思います

もしすでに獣医師になっていて、ある程度「獣医内科学」に書いてあることは理解していると思うのであれば、
次は海外の教科書にチャレンジしてほしいと思います。

「Small Animal Internal Medicine」は、名著です。
初版は、1990年代の僕が学生だったころに出て、
そのあと5年くらいに1回ずつ定期的にきちんとアップデートされている本です。
今一番新しい版は、2019年にでた第6版です。

第2版は、僕が学生のときに内科の学生と研修医でみんなで輪読会をしていたのですが、
そのときの輪読会をもとに、日本語訳本を作ってもらいました。
第4版も、引き続いて日本語訳になったのですが、
なにせ日本語訳は10万円を超えることもあり、そのあとは日本語訳がでなくなってしまいました。
とても名著ですし、英語もとても読みやすいので、ぜひみなさん一度読まれることをお勧めします。

「獣医内科学」との大きな違いは、
やはりアメリカの獣医内科専門医などが中心になって書いているので、
いわゆる欧米の現在の最新のスタンダードが記されている点、専門医が考えていることなどが書かれている点です。
日本の「獣医内科学」は、この本を参考に書いている先生もいらっしゃるくらいです。

もう一つ内科の教科書として忘れてはならないのが、「Textbook of Veterinary Internal Medicine」です。
現在は、第8版がでており、これも定期的にアップデートされます。

これも非常によい本ですが、上記のSmall Animal Internal Medicineと比較すると、
文字も小さいですし、少し読みづらいと思います。
私の使い方としては、上記の本で載っていないところを調べたりするのに使用したりする程度です。
読み物としては上の本の方が読みやすいと思います。

3. 上記の本を読むと内科の病気の知識は十分ですが、診断プロセスを意識する必要があります

上記の1.だけでもきちんと読みこむと、
かなり内科の病気には一通り詳しくなるはずです。

でも残念ながら、それだけでは内科診療自体はできるようになりません。

なぜなら、多くの教科書は、
病名が先にあって、そのあと症状、診断、治療がつらつら書かれているからです。

病院に来る動物は、症状がさきにあって来院します。
したがって我々は症状から、いかに診断にたどりつくか、というプロセスを学ぶ必要があります
教科書の書き方とは逆ですよね。

症状からプロブレムリストを作成し、診断ができて初めて病名にたどりつけるからです。
治療については、極端な話、診断がついてしまえば、
あとは調べればいいので、まずはきちんと正しく診断するプロセスを学ぶことが大事だと思います。

最近は、POMR (Problem Oriented Medical Record:問題指向型診療録)という言葉もよく聞かれるようになってきましたし、
獣医内科学の教科書にももちろん載っていますが、
この問題点(症状)からどうやって問題を解決していくか、
そういうプロセスを体系的に学べるような下記のような本も出版されています。

ただ一番いいのは、
内科学的な診療をできる人にみっちりついて、
そのプロセスを間近で1年ほどみっちり学ぶことにほかなりません。

内科の考え方は、推理小説のなぞときのようで、
慣れるととても面白いと思いますので、Let’s enjoy!