このブログの一つの目的
このサイトの一番の目的は、犬と猫の飼い主さんにそれぞれの病気について正しい知識を知ってもらうことです。
私はふだん大学附属の動物医療センターで
小動物(我々の世界では小動物というとペットのことを指します)のうち、犬と猫の内科系診療を行っています。
大学附属の動物医療センターをふくめ大きめの病院は、二次診療施設として開いているところがあります。
一般開業動物病院さんとは異なり、
予防医療(ワクチンやフィラリア予防薬の処方など)は一切行わず、
一般動物病院さんからの紹介症例のみを扱います。
したがって連れてこられる犬や猫についていうと、
一般動物病院さんでは診断するのに検査が大変、高額な機器を使用する、
治療についても特殊な手技や高額な機器が必要、などという場合が多いため、
獣医療のなかでも少し特殊な環境ということもできます。
こうした形で、学部学生の3年間、大学院生時代の4年間、教員になってからの14年間、
小動物の獣医療に携わっており、そのなかでいろんなことに気づくようになりました。
とくに我々のような二次診療施設にお越しになられる飼い主さんは、
ある程度時間とお金に余裕のある方が一定数を占めますので、
必然的に病気のことについてもご自分でいろいろ調べていらっしゃる方が多いと思います。
しかしそれでも犬と猫の病気のこと、その診断のこと、治療のこと、などについて正しく知識が伝わっていない、
または誤解されている、もしくはインターネット上の多くの情報から正しい情報を吟味できていない、
などの問題があることが徐々にわかってきました。
おそらく一昔前は、インターネット上から情報を拾うことが難しかったため、
あまり知識を持ちあわせていないか、もしくは知識を持っていらっしゃる飼い主さんは、
出版されている飼い主さん向けの書籍などから情報を得ることにより、
ある程度正しい知識を持ち合わせていたのだと思いますが、
一方で現在は情報がインターネット上に氾濫しているために、
なにが正しいのか我々専門家でも迷うような情報もあったりするような時代になっています。
そのような状況ですので、
たとえば正しい知識がないために自分の動物の診断や治療を諦めてしまう、
勝手に治らないと誤解をしてしまう、
高額な費用をかけないと治らないと考えてしまう、
などということが意外にも多いのではないかと感じるようになりました。
我々の日常の外来は限られた時間で限られた方を対象に実施していますので、
もう少し飼い主さん全体にうまく啓蒙することができれば、
もしかすると救える命があるのではないか、
最良の治療とはいかなくても場合によってはその子のためにできるそれなりの治療法を受けられる子が増えるのではないか、
ということを思うようになりました。
獣医療の場合、なにがなんでも命を救うという医療とは少し異なるところがあります。
もちろん私が大学で行っている研究はなにがなんでも救える命を一つでも増やすために日々行っているわけですが、
もともと寿命が人ほど長くない動物にとって、高度で高額な獣医療がすべてではないこともあります。
たとえばその治療を行うことによって1ヶ月でも寿命が延長することをご希望される飼い主さんもいらっしゃれば、
そうした治療はいらないので、家で一緒に過ごす時間を大事にしたい、と考える飼い主さんもいらっしゃいます。
そのように個々のケースは様々で、とくに獣医療はそうしたことが重要視されるべきだと思います。
こういうことを考えると、
我々獣医師が行うべきは、
飼い主さんの求めていることを的確に理解し、その上で多くの選択肢を提示し、
その選択の過程においてできる限りのサポートをする、ということの重要性を理解していただけると思います。
このブログは、上記のようなことを踏まえて、よく飼い主さんから聞かれるような疑問などを多くの方に理解していただくことで、一人ひとりの飼い主さんがよりよい獣医療にたどりつけるようにサポートできればと思っています。
飼い主さんも動物もその両方が生活の質を落とさずにやっていける方法を選ぶ必要があることもあるのではないでしょうか。