犬猫の免疫の疾患(免疫介在性疾患)を4つに分類して解説します(一般の方、初学者向け)

免疫ってなんだろう
犬や猫の免疫の病気、免疫介在性疾患ってなんだろう

こういった疑問に答えます

本記事の内容

1. 免疫という言葉の意味をしりましょう
2. 免疫の病気はおもに4つに分けることができます
3. それぞれ治療法は全く違うので、きちんと診断することが大事です

この記事を書いている僕ですが、
 免疫の専門家です
 免疫の病気に関する講演を多数行っていますし、
 免疫介在性疾患の犬猫の治療をたくさん行ってきました。

こういった僕が解説していきます。

今回のタイトルには、犬猫がついていますが、人でも考え方は全く同じです。

1. 免疫という言葉の意味をしりましょう

免疫って、よく「疫を免がれる」、つまり病気にならない仕組みといわれますが、正しくは、自分と他人を区別する仕組みです

つまり自分の体に入ってくるものを、自分か他人かを区別して、他人と感じたものを排除する仕組みです。

たとえば、細菌やウイルスなどの異物が自分の体に入ってきたときは、それは自分にとって異物(他人)ですので、排除します。

ほかの例として、臓器移植などで、他の人の臓器を移植する場合も同じようで、自分の臓器と違うものが入ってくるので、一般的に拒絶してしまうのは免疫の当然の働きです。

これが免疫のそもそもの役割なわけです。

そのかわり、健康な場合、自分の臓器を傷つけることはありません。
それは自分の体に対しては免疫反応が起こらないようになっているからです(難しい言葉では「免疫寛容」といいます)。

免疫って、えらいですよね。免疫は、自分か自分じゃないかを見分けているんですよ!

2. 免疫の病気はおもに4つに分けることができます

まずこの図は、正常な場合です。
さきほど書いたように、細菌でもウイルスでも体になにか異物が入ってきたときには、体はそれを免疫システムによって排除します。そして自分の臓器は自己なので、免疫はそれを攻撃したりしないようになっています。

では、免疫が関係する病気について、どのようにおこるのかという観点から、4つに分けてみようと思います。下の図をみてください。

アレルギー

外から異物が入ってくるときに免疫が過剰に働いてしまう場合ですが、それをアレルギーといいます。
たとえば人間の場合、一番に思いつくアレルギーというとスギ花粉症だと思います。これはスギ花粉が体にはいってきたときに、普通は体が適切に反応して排除するため、何も症状などを出すことはありません。一方で、入ってきたものに対して免疫が過剰に反応してしまう場合は、アレルギーの症状がでるわけです。

免疫不全症

外から異物が入ってくるときに体が反応できない場合です。体が反応できない、というのは、外から異物が入ってきたのに、それに対して免疫が異物だと思って反応しない、つまり免疫不全の場合です。
もともと生まれつき免疫がうまく働かない先天性の場合もありますが、エイズや、免疫抑制剤などによって体の免疫力が落ちてしまう場合などのように後天的に免疫が落ちる場合もこの状態にふくまれます。

自己免疫疾患

免疫の根本は、自己と非自己を見極めることでした。
したがって、もともと自分の体に対して免疫は働かないようになっているわけですが、間違って自分自身の臓器に対して免疫が働いてしまう場合があり、こうした病気の総称を自己免疫疾患とよびます。自分で自分の体に対して攻撃をしてしまうことで、その対象となる臓器に炎症が起こったり、その臓器が壊されたりします。自己の臓器に対して免疫が働いてしまうので、自己免疫疾患とよぶわけですが、犬猫の場合、自己免疫疾患とはよばずに免疫介在性疾患とよぶことが多いです。

腫瘍

我々の体では、がんの元になる細胞が日々作られています。これらはもともと自分の体から作られるので自己(自分)なのでですが、がんの元はもとの臓器とは少し変化していますので、異物と言えば異物なのです。通常は、それに対して免疫が働くことで、目にみえるようながんができずに済んでいるわけですが、なんらかの要因(免疫抑制剤や加齢)によって免疫がおちてくると、こうした腫瘍が大きくなって、実際に目に見える腫瘍(がん)になります

繰り返しますが、免疫は自分自身と異物を区別するために働くものであり、免疫が適切に働かないことで上記の4つのいずれかの病気になるわけです。

3. それぞれ治療法は全く違うので、きちんと診断することが大事です

このように、
上記の4つの状況はすべて免疫が適切に働かないことで生じる病気ですが、それぞれの状態は全く違いますので、治療法も異なります

アレルギーと自己免疫疾患は、免疫が過剰に働くので、どちらかというと免疫を抑えるような治療が必要になります。
一方、免疫不全症と腫瘍は、免疫がおちてしまうことが原因ですので、何らかの方法で免疫を上げる方向性の治療をする必要があるわけです。

それぞれの4つの分類に当てはまる犬猫の病気やその診断治療などについては、また別途解説しますが、今回は免疫の状況によって生じる4つの主な病気の分類についておおまかにご理解いただければと思います。